私の職場では、新しいシステムが完成した際などに、テストユーザーが必要になります。
開発陣からすると「実際に使う人の反応を見てみたい」
「感想を聞いてみたい」と思うのは当然なのですが、
頼まれる側としては「また面倒な確認かもしれない」と少し身構えてしまいます。
システムを開発しているのは、最前線で働いている優秀なメンバーが多いこともあり、
細かい確認が必要になる可能性があります。
そのせいか、テストへの参加率が悪かったり、
募集にたいするコメントが薄かったり、といった状況がよくみられます。
そんなことを考えていたある日、上司がテストユーザーを求める際の言葉として、
面白い言葉を教えてくれました。
“Let them know that they were nominated and chosen for this great opportunity by leadership, and make them feel it is an honor to participate.”
「リーダーシップから、この大事な機会のために推薦され、選ばれたのだと伝えなさい。
そして、参加することが名誉だと感じてもらいなさい。」
この表現を耳にして「なるほど」と思いました。
同じ「テストに参加してください」という依頼でも、選ぶ言葉で受け止め方が大きく変わります。
ただ参加を求めるだけでは「追加作業が増えるだけ……」となりますが、
それが「選ばれた機会」となれば、意味合いが変わってきます。
自分の意見がいかに重要なのか、リーダーシップからいかに期待されているのか、
といった部分を強く実感できますよね。
もちろん、テストユーザー=現場代表ですので、そもそも選ばれた機会なのですが、
英語圏はHonor(名誉)が人を動かす文化です。
だからこそ、この伝え方を選ぶことで、とても自然にやる気を引き出せるのだと思いました。
では、この表現を「このテストに選ばれるのは名誉です」と日本で使ったら……どうでしょうか。
少し大げさですし、人によっては嫌がられてしまうかもしれません。
日本語で表すなら、名誉よりも「責任」や「代表」といった言葉の方が、動機につながる気がします。
「現場を代表して意見をいただきたい」
「実際の運用環境に近い方の声を反映したい」
「皆さんの確認が、実装する際の品質に関わります」
と言われた方が、まだ引き受けやすい気がしますよね。
頼んでいる内容は同じでも、人を動かすスイッチになる言葉は、国や文化によって変わります。
ビジネスは、人に何かをお願いする機会の連続です。
だからこそ、目の前の相手にはどんな言葉が響くのか、
という点を考えながら話すと、依頼を引き受けてもらえる可能性を高められそうです。
Honorで動く人には、機会として伝える。
責任で動く人には、役割として伝える。
海外を相手に仕事をしていると、こんな小さな違いに出会う機会があります。
国や文化のギャップを見つけるたびに、言葉って面白いなあと感じています。