Hall of fame と Hall of shame

考察

バックオフィスの仕事をしていると、数字やデータから「人の行動」がみえてきます。

予算を達成している人。
CRMデータ上で成績が良い人。
データ管理をきちんとしている人。
ルールに沿って動いている人。

もちろん、その逆もしかりです。

今回、本社から共有されたダッシュボードは、活動状況をきちんとアップデートしていない人や、営業活動に遅れが見られる案件、担当者のリストなど“できていない人や案件”をまとめた内容でした。

データを受け取ったものの、この中身をそのまま現場に展開するのは、どうにも気が進みません。

英語には “Hall of fame” (名誉の殿堂)と “Hall of shame”(恥の殿堂) という表現があり、

The team created a hall of fame for top performers.
「そのチームは成績優秀者の殿堂入りリストを作った」

The dashboard looked like a hall of shame.
「そのダッシュボードは、まるで不名誉リストのように見えた」

といった風に使うのですが、今回は「不名誉リスト」が共有された形です。

日本にも「表彰」「殿堂入り」「優秀事例」「ベストプラクティス共有」といった
Hall of fame に近い文化はあります。

このような、良い方のリストは受け入れられやすく、組織が何を良い行動と見なしているのか、
という姿勢を示す意味でも、周知する価値があります。

一方の Hall of shame は、かなり扱いづらい表現です。

日本でも「失敗事例」「ヒヤリハット共有」「反面教師」「再発防止事例」といったリストはあります。
医療や製造、品質管理の現場では、失敗やミスの共有が重要です。

ただこれらは、個人を晒す目的ではなく、同じミスを繰り返さないための学びとして扱われます。
日本で名前を出してしまうと、とたんに
「吊し上げ」「見せしめ」「犯人探し」のような雰囲気になってしまいます。

英語圏では、皮肉やユーモアを含めて、良い例と悪い例をはっきり並べるケースがあります。
ですが、私は日本人ですので、不名誉なダッシュボードを共有するのはどうなのか……
と悩んでしまったのです。

CRMを正しく更新してほしい。
営業活動を止めないでほしい。
案件の遅れを早く見つけたい。

という目的は理解していますが、一歩間違えると「改善しよう」ではなく
「誰ができていないかを見つけよう」になってしまう恐れがあります。

アジア圏や外資系企業など、さまざまな国や文化が混在する環境では、
人によって受け取り方が違うため、より注意が必要です。

今回の私の件では、ダッシュボードを Hall of shame ではなくHall of fame に寄せられないか、
考えてみました。

「きちんと更新できているチーム」「改善が進んでいるリージョン」など
「良い営業習慣が見える事例」を見せ、誰かを責めるのではなく、
良い行動を増やす方向に変えていくという試みです。

これは、単なる言葉の言い換えではありません。

Hall of shame は、問題を早く見つけられますが、現場の空気が重くなってしまいます。
しかしHall of fame は、少し遠回りになったとしても
「こういう行動が評価される」と理解した上で、ポジティブな職場環境を作れます。

データは中立ですが、その数字を動かしているのは人です。
だからこそ、どう伝えるのが最善なのか、
前向きに受け止められる道を考えたいと感じたできごとです。

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