以前、会議の中で出てきた一言が、妙に引っかかりました。
“We can run the table by sending out the message, right?”
(メッセージを出せば、一気に全部やり切れるよね?)
この会話で登場する “run the table” は、ビリヤードに由来する言葉です。
ビリヤードで先手を取ったまま、相手に一度も順番を渡さず、
最後まで勝ち切るケースを “run the table” と呼びます。
今回のようにビジネスで使う場合は「途中で止まらず、一気にやり切る」というニュアンスになります。
この例のように、英語では「table」という言葉が単なる机ではなく
「意思決定の場」そのものを指しているケースが多くあります。
また “table” を軸にした表現は、役割ごとにきれいに分かれていますので、
いくつかの使い方をご紹介したいと思います。
Bring to the table / Put on the table
“She brings strong insights to the table.”
(彼女は価値のある洞察を持ち込んでいる)
“Let us put that idea on the table.”
(そのアイデアを議論に乗せましょう)
“bring something to the table” は「その人が何を持ち込めるのか」という、価値や貢献を表す会話で使われます。一方で “put something on the table” は「何を議論に乗せるのか」となります。
似ている表現ですが、主語が「人」なのか「論点」なのかで、使い分けられています。
キックオフでは、この2つが揃ってはじめて、議論が立ち上がります。ここが曖昧だと、会話が進んでいきませんので、机に乗せる材料を準備した上で、進めたいところです。
On the table / Off the table / Under the table
“The proposal is on the table.”
(その提案は検討中です)
“That option is off the table.”
(その案はもう検討対象外です)
“He handled it under the table.”
(それは非公式に処理された)
“on the table” は検討中、“off the table” は除外済み、“under the table” は非公式という意味があります。この3つは、議論の中の「見えている範囲」「見えていない範囲」を整理する際に役立ちます。
何が検討されていて、何が終わっているのか、この共通認識が机に乗っていると、会議中に話が迷子になる可能性を大幅に減らせます。
Table(動詞) US vs UK
“Let us table this.”
この言葉は、アメリカ英語とイギリス英語で、意味が逆になるため注意が必要です。
アメリカでは「先送りする」イギリスでは「議題として正式に出す」となり、同じ言葉なのに受け止められ方は正反対になります。
APACで仕事をしていると、シンガポールやオーストラリアなど、
イギリス寄りの感覚で言葉を覚えている参加者もいます。
私も以前、イギリス式の意味しか知らなかったため、
ある会議で “Let us table this” と言われ「では議題として議題に載せるのですね」と理解し、
話を進めてしまいました。
ところが相手は、アメリカ式の「今日はここで止めて先送りしよう」という意味で使っていたため、
会議が大混乱した経験は、今でも忘れられません。
皆さんも “Let us table this.” という言葉を耳にしたら、
発言者はどこの出身なのか、出席している会議や打ち合わせでは、
どちらの意図で話しているのかを確認してから、返事を選んでみてください。


