先日、営業リーダーが、チームへ今後の戦略や具体的な動き方を伝えた後、
最後にこんな言葉で締めていました。
“If this was easy, AI would do it. AI cannot do it, nor can most people.
You’re special, so go do your thing!”
「これが簡単ならAIがやっている。(しかし)AIにはできないし、
たいていの人にもできない。あなたたちは特別なんだから、○○○○だ!」
この○○○○の部分、あなたはどう訳すでしょうか? 私はまず直感的に、
「簡単な仕事ならAIがやる。(でも実際は)AIにもできず、たいていの人にはできない。
だからこそ、あなたたちがいるんだよ」
というニュアンスが浮かびました。
仕事の難しさを認めた上で、チーム全体の背中を押してくれるイメージです。
ただ、問題は最後の “go do your thing”です。
直訳すると「やることをやれ」ですが、ここでの意味は違いますよね。
作業を指示するのではなく
「さあ、自分の持ち味を出してこい」「ここからは自分で引き受けて動かしてこい」という、
励ましに近い印象でしょうか。
ただ、これを日本語で同じように表現しようとすると、急に難しくなります。
「あなたらしくやってきて」は近いけれど、自己啓発的な響きが入ってしまいます。
「あとは任せた」という言葉は自然だけれど、
“You’re special”「あなたたちは特別だ」という言葉の熱量が落ちてしまう気がします。
「ここがあなたの見せ場だ」という表現も悪くありません。
ただ見せ場となると、舞台の上でスポットライトを浴びるような感じがあり、
仕事の会話としてはやや照れが生じます。
文脈の勢いでいえば、「目にもの見せてやれ」もかなり近い気がしますが、
AIにも普通の人にもできないのだから、「ここで一発見せてこい」という言葉の方がしっくりきます。
ここまで考えて、結論として落ち着いたのが「腕の見せ所だ!」という表現です。
「技量を発揮する場面である」という意味で自然ですし、
仕事の文脈にも合います。
決して大げさすぎず、でも「あなたならできる」という信頼も伝えられる、
最適な着地点だと思いました。
良い日本語表現が浮かび、ほっとしていたら
「そういえば、似たような表現が他にもあったような……」と思い出したのが
“do your own thing” です。「周りに合わせず、自分のやり方でやる」という意味があります。
“Own”「自分自身の」が入ることで「人は人、自分は自分」「我が道を行く」
というニュアンスが出てくるのが面白いですよね。
今回の “do your thing” は「好きにしろ」ではなく、
それぞれの得意技を信じて、仕事を任せる言葉なのだと思います。
そして、この一言があるかないかで、文章にこもる熱量が大きく変わります。
言葉というのは A=B で置き換えられるものではなく、
その場のニュアンスで捉え方が違ってくるんですね。
私自身も、他人に聞かれたら「腕の見せどころだ!」と説明しますが、
心の中では「目にもの見せてやれ!」にもちょっとだけ寄っているなあ、と感じています。


