塩コショウとコショウ塩

例文・トピックス

自然に聞こえるのはどっち? 塩コショウとコショウ塩

私の会社の本社は、ポルトガルにあります。
ポルトガルにはポルトガル語という母国語がありますので、
英語ネイティブの人とつねに英語で話している、というわけではありません。

仕事で関わるさまざまな国の人が、共通に使える言語として、
英語でのコミュニケーションが選ばれています。

そんな私たちの会社のSlackには、improve-your-english というチャンネルがあります。
これは「英語ができない人のためのチャンネル」ではなく
「みんなで英語という不思議な道具を観察するチャンネル」という感じで運用されています。

先日このチャンネルへ「英語には、形容詞を並べる場合の順番がある」という話が
投稿されたのをきっかけに、面白いやりとりがはじまりました。

たとえば、こちらの文章です。

“She was a beautiful, tall, thin, young, black-haired, Scottish woman.”
「彼女は、美しく、背が高く、細身で、若く、黒髪の、スコットランド人の女性だった」。

なんとなく好きな順番で形容詞を並べているようにみえますが、
実はしっくりくる順番があるのだそうです。

ポルトガル語が母国語の同僚たちは、こんな風に感想を言いながら、盛り上がっていました。

“Um bonito casaco azul.”「美しい青いコート」。これは自然!
“Um casaco azul bonito.”「青くて美しいコート」。これも別に変ではない!
でも、“Um casaco bonito azul.”「美しい青いコート」。これは少し変だ。

どれもコートの「美しさ」や「青さ」を伝えたいメッセージで、
1番目と3番目の日本語訳は同じです。
でも、語順が変わると、人によっては首をかしげてしまうようなのです。
ポルトガル語なので、私にちっともわかりませんし、
日本語になった段階で、微妙、、としか言えませんが。

会話はさらに続き、言葉の順番をわざと入れ替えてみる人もあらわれました。

  • 正しくは “pros and cons”「賛否」「良い点と悪い点」。
    それを “cons and pros” と言ってみる。
  • 正しくは “trial and error”「試行錯誤」。
    それを “error and trial” と言ってみる。
  • 正しくは “salt and pepper”「塩こしょう」。
    それを “pepper and salt” と言ってみる。

意味は分かりますが、逆になると、確かに気持ち悪いのがわかります。

日本語でも「塩こしょう」を「こしょう塩」といわれたら「あれ?」と一瞬、意識が止まります。

「青いきれいなコート」と「きれいな青いコート」を
日本語で考えてみた場合も「なぜ違うのか」という説明は難しいけれど、
受け取る側の印象は異なります。

英語はグローバル企業の共通語として広く使われていますが、
その中身は決して一枚岩ではありません。

今回のも、ネイティブ英語やポルトガル語が母国語の同僚の英語、
私のような日本人の英語。
それぞれの母語の感覚が混ざりあう場だったからこそ、
小さな発見があり、面白い話題になりました。

正しい英語を使う、話すことも大事ですが、
完璧であることにこだわる必要はないのかな、と思います。
相手が「あれ?」と少し首をかしげる程度で、
ちゃんと意味が伝わっているのなら、会話として十分です。

正解を競うのではなく、間違っていても「なんか変だね」と笑いながら使う、
そんな共通の道具にできると、もっと気楽に会話を楽しめそうです。