メール返信をうながす遠回しの言葉~bumping this up~

例文・トピックス

ある日、メールの受信箱をチェックしていたら、
少し目を引くメッセージがありました。メールの本文は、たったの一行。

“Just bumping this up.”
(このメールを少し上に上げておきますね)

と書かれています。

はじめてこのメッセージに出会ったときは「メールを上に上げる?」と
不思議に思ったのですが、文脈を見て、すぐに意味を察しました。

送り主は、以前
私宛てに送信したメールが、
他から届く大量のメールに埋もれてしまわないように「見落とさないで」という意味で、
受信箱の上に表示されるように戻していたのです。

もちろん、送り主の本音としては「メールを送っているので、
お返事いただけると助かります」という気持ちがあるはずです。
ただ、それを直接文章にするのではなく、遠回しの一行にすることで、
受け取る側にストレスを与えない、柔らかい表現になっています。

bumping this up に限らず、英語のメールではこのような、
相手への気遣いを感じられる、少し遠回しな催促がよく使われています。

私自身も、

“Sending this again just to make sure this email stays on top.”
(このメールが埋もれないように、念のため再送します)

という表現を使うことがあります。意味としてはほぼ同じですが
“Just bumping this up.” は驚くほど短い表現です。

たったの4語で、送り手が送信している様子や雰囲気まで伝わってくるのが面白いですよね。

送り主は、誰にたいしても気さくに話しかけるタイプの人です。
それを知っているからこそ、この表現も「返事はまだですか?」という圧力ではなく
「埋もれちゃいそうなので、ちょっと上に戻しておきますね!」くらいの、
軽い声のトーンが聞こえてくるようです。

英語の表現の多くは、辞書を引けば、言葉の意味を理解できます。
ですがビジネスの場面で目にするメッセージを見ていると、
単純な言葉の意味だけでなく、その人がどういう顔をして、
どういう声色で話しているのか、といったイメージが頭に浮かんできます。

だからこそ、もし私が会社の人間や取引先に“Just bumping this up.”を
使ってメールを再送したら……
そのときは同じ文章でも、聞こえ方が違ってくるはずです。

おそらくですが、
普段から関係者のフォローアップが仕事となっている私のことなので、
私にメッセージを送ってきた主のような軽さはなく
「そろそろ返事をくださいね」と堅い印象で受け取られる気がします。

無機質なメールというツールなのに「人によって運ばれる言葉の雰囲気が異なる」
というのが興味深い一件でした。

あなたの受信箱の中にも、相手の話し方や性格がメッセージと一緒に届けられている、
そんなメールがあるかもしれません。
相手はどんな表情でメールを打っているのか、
自分の言葉は相手にどう受け止められているのか、
ちょっと考えてみると新しい発見につながりそうです。