目的や相手、検討などが外れているときに使う「お門違い」という古い日本語表現があります。
あるとき「お門違い」だなと思いながらも、
すぐ英語で言い換えられず、4~5秒言葉に詰まってしまいました。
「お門違い」という言葉は以前、
日本語教師が「強い日本語なんだよね」と言っていました。
語源は「行く家を間違える」ですが、そのまま直訳してもおそらく伝わりません。
そこで選んだのが、
“You are asking the wrong person.”
「聞く相手を間違えているよ」
という表現です。
「聞く相手を間違えている」と伝えると、
単に「私は知りません」という意味ではなくなります。
「決定する人が違うのかもしれない」
「責任を持つ人が違うのかもしれない」
「情報を持っている人が違うのかもしれない」
このように、どんな話だったとしても
「ここで私に聞いても、求める答えは得られませんよ」という事実を届けられます。
このように「知らないから答えられない」のではなく
「聞く場所が違うよ」という表現は、実際によく使う言葉です。
(私がお門違いな状況によく巻き込まれている、という表れでもありますね)
似たような表現に、
“That defeats the purpose.”
「それだと、そもそもの目的が壊れる」
というフレーズがあります。
日本語でいうなら「本末転倒」に近い言葉でしょうか。
「作業は進んでいる」「解決方法は提示されている」でも、
その方向が目的と合っていないため本末転倒である、という場合に使われます。
たとえば「ルールを守っている人にご褒美を出そう」という提案があったとします。
ルールの順守を考えれば一理ある方法ですが、
結果として「ご褒美がないとルールが守れない状況になっては本末転倒である」
というような場面です。
紹介した二つのフレーズのことを考えていたら、
red herring と barking up the wrong tree という表現を思い出しました。
どちらも猟犬にまつわる言葉なのですが、
日本語でいうなら「論点ずらし」「本筋ではない話」というイメージです。
“That’s a red herring.” は「それは本筋から注意をそらす話だ」という意味になります。
red herring は、匂いの強い燻製ニシンで猟犬の嗅覚をそらす、という話から来ているそうです。
猟犬は必死に匂いを追っているけれど、その匂いが本命ではない。
そのため red herring は「完全に間違った話」ではなく
「それっぽいけれど、そこを追うと本筋から外れる話」というニュアンスで使われます。
もうひとつ、
“Barking up the wrong tree.”
「違う木に向かって吠えている」
という言葉もあります。
こちらも猟犬の話で、犬は木の上に獲物がいると思って吠えています。
でも実際に獲物がいるのは、別の木です。
このことから、探している場所が違う =「見当違い」という意味で用いられます。
今回紹介したフレーズは、どの言葉も本人や本犬は一生懸命頑張っていて、
仕事をサボっているわけではありません。
方向性は間違っているけれど、当人の努力は認めてあげたい、
そんな場面で上手に活用できたらいいなあと思っています。