面白いと思えたGallupレポートがあったので共有。
レポートタイトル
「Three Requirements of a Diverse and Inclusive Culture — and Why They Matter for Your Organization 」
ダイバーシティー&インクルージョンの文化に必要な3つの必要事項 ― そしてなぜそれが組織に必要なのか (Gallup社レポート)(Gallup社 – 備考1)
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レポート要約
ダイバーシティー&インクルージョン(以下D&I)で、どれだけ多様性を担保するかも大切だが、「インクルージョン」の質を追求するのが、大切。そのための、3つの必要事項は下記となる。
1)全社員は敬意をもって遇されるべきである
2)全社員はその才能・強みを尊重されるべきである
3)リーダはただしいことをすべきである
「Three Requirements of a Diverse and Inclusive Culture — and Why They Matter for Your Organization 」
概要
職場では今、Z世代やミレニアム世代など、世代間における考え方やライフスタイルの多様性から、ダイバーシティが当然のことになっている。そして、レポートによると、この多様性とエンゲージメントはそれぞれ、46%および58%の高い経済的効果を企業総収入と純利益という観点で出しているとのこと。なので、当然ながら、企業の55%は、インクルージョンが大事と言っている。
なのだが、現実はアメリカですら45%の社員がなんらかの差別やハラスメントを12カ月以内に遭遇している。いまだ、多様性に対する取り組みは進んでいてもインクルージョンは険しい道なのである。つまり、D&Iを効果的にするために肝要なのは、多様性だけではなくて「インクルージョン」における必要事項を満たすことなのだとレポートは提案している。
レポートの言う必要事項は、下記の3つである。
1)社員は敬意をもって遇されるべきである
革新・変化へ対応するには個々の社員の能力を全面的に活かす必要があり、そのためには安心と信頼がいる。人々が個々のユニークさを尊重できないところで、安心感や信頼感を感じてもらおうとしても、それは期待できない。「会社から尊敬を持って遇されていない」と答えた社員の90%はなんらかの差別やハラスメントを経験している)
2)社員はその才能・強みを尊重されるべきである
インクルージョンの伝統的なアプローチは受け入れることにフォーカスしており、それは、社員それぞれがお互いに好ましいと思っているかどうか・好ましく思われているかどうか、というものである。確かに受容は一体感・帰属の根源である。けれども、それは、一方的に体制に組み込まれて全体の一部になるのとは違うのである。その人、それぞれの個性を認めて尊重し合うことが、大切なのである。ビジネス上で大きな効果を出すに至るには、より個々人が「ありのまま」で、グループに受け入れられ所属していると心から思えること、が大事なのである。その強みも弱みも、自分の特性の何が適性で貢献しているのか、その実感がポイントなのだ。
3)リーダーはただしいことをすべきである
信頼なくして、組織の強さはありえない。個々人が自分自身の弱さも強さも含めて受け入れてもらえるという多様性の土台を作るには、リーダーが公平であり信頼できる、ということは必須だからである。
個人的感想
Diversity and Inclusionは、日本語でも、「ダイバーシティー&インクルージョン」とカタカナ表記するか、「多様性と包括/包摂」といわれている。余計に理解しにくい。説明としては、「多様性を認めて活かし合おう」というニュアンスで訳すらしい。だが、どうもメディアから聞こえている論調では「多様性」だけに注目が行っているようで気になるのだ。女性が含まれているか、若い人がいるか? どれだけのバリエーションがあるか、割合があるか、だけが注目されているように思えてならない。
「女性だから登用・採用・リクルーティング」、そんな風潮はおかしいとおもう。私ごときにも「女性だから」ということで企業の幹部や支社長としてのヘッドハンティングのお声がかかる。だが、正直、「女性=全人類の約50%の属性」を採用・ヘッドハンティングの理由にされても腑に落ちない。能力や才能、適材適所などの、当たり前の視点が何処かに行ってしまっている。そんな斜めにずれてしまった期待値を持たれていては、社員のエンゲージメントがあがるわけがない。
GALLUPのこのレポートは「D&I」を社員のエンゲージメントと絡めてレポートしており、多様性は当たり前、それに加えて実際の「インクルージョン」の仕方が重要、と説明している。
「インクルージョンをどう担保するか」という方が、「多様性を広げるということ」よりも重要というのは納得であった。日本文化では、ともすれば、「日本人として」「普通は」「常識的に考えて」という言葉によって、同調圧力がかかってくる。せっかく広げた多様性を、そんな同調圧力で潰している気がしてならない。さらには、セクハラぎりぎりのサービスを要求されたり、女であることそれだけが資格であるかに見られたり、リーダーの汚職とごまかしのニュースに毎日接すると、社会に欠けているのは、まさにこの「多様性を認めて、相手を尊重して、相手の個性を認め合う=インクルージョン」という視点ではないかと思われる。
「多様性も大事。でも同調・同化より、相手を尊重して認め合って一体感を持つことがもっと大事」ということ、私の個人的な安寧だけだとは思わない。世界経済の中では、革新と生産効率のために、「社員の気持ちや、やる気まで持ち出して競合している」弱肉強食の世界経済という事実がある。日本だけこの世界経済から独立していられるわけがない。そして、いつまでも大量生産時代の「労働者を機械のネジの一部」とみなす日本経済の論理では太刀打ちできない。何十年も遅れてしまっている日本の経済の行方に、絶望的な遅れを禁じ得ないのである。
備考
The Gallup Organization
ギャラップ(The Gallup Organization)は、アメリカの世論調査及びコンサルティングを行う企業。民間企業による世論調査の先駆け的存在で、世論調査はギャラップ調査 (Gallup Poll) と称されて信頼が厚い。世間の注目を集めた調査に、世界各国の企業を対象に実施した従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)調査があり、日本は「熱意あふれる社員」の割合が6パーセントで、調査した139国中132位。