プレゼンや会議に参加していると、
「 Don’t shoot the messenger」
というフレーズを耳にする機会があります。
実際に聞いたことがある、という方もいるのではないでしょうか?
このフレーズ、もともとの意味は言葉そのままで、
戦場で伝令を伝える係の兵士が「メッセンジャーだから!撃たないで!」と、
自分の命を守るために用いるフレーズです。
古代ギリシャや中世ヨーロッパなどでは、
伝令兵が自軍にとって不利な知らせを持ってきた場合、
怒りの矛先としてその場で殺されてしまう、という状況が多くあったそうです。
だからこそ
「 Don’t shoot the messenger」と言葉にして、
理解を求めていたのでしょうね。
それから時は流れ、現在はビジネス用語として、
「 Don’t shoot the messenger」が使われています。
伝令役兵士の想いを汲んだのか
「自分はただ伝えているだけで、内容についての責任はない」
という意味で活用されています。
「私はあくまでも伝令役、非難しないで」
「不完全な部分があっても、私を責めないで」
「私の考えではないから、意見を求めないで」
そんな発言者の気持ちが想像できます。
実際、プレゼンの担当者に任命されたけれど、
この内容では参加者が納得しないだろうなあ、という発表、ありますよね。
あれこれ言い訳するのは憚れるけれど、
そのままでは場の空気が重くなりそう。
このような場合にちょっと冗談めかして使うと、場を和ませられるのがメリットです。
便利な言葉ですが、ただし、
Defensive(防御的な)な表現・姿勢のため、聞き手へ悪い印象を与えるリスクもはらんでいます。
①責任回避
最初から「私はこの問題と関係ない」と、距離を置いているように聞こえる
②不安からの予防線
自分の話題が批判されるのでは? そう前もって恐れているように感じられる
③軽率な印象
冗談めかした表現のため、プレゼン内容によっては、
重大な話題を軽く扱っている印象を与えてしまう
会社の上層部が参加するような規模の大きいプレゼン、
重要事項を決定する厳格な会議などで
「 Don’t shoot the messenger」を使ってしまった場合、
「言い訳に聞こえる」「責任感が薄い」「大切な場でふざけている」と受け止められ、
立場が悪くなってしまう可能性があります。
これまでもブログで触れてきましたが、
英語圏では前向きな姿勢が求められます。
大事な場面での一言や、
自分の品格を下げたくない場合は、次のような言い回しが適切です。
「プロフェッショナルな印象を目指す場合」
•“This is the direction we have been asked to take, and I am here to walk through what it means.”
(これは会社として示された方針であり、その意味を皆さんへ説明するために来ました)
この表現であれば、伝える側が「自分の意見ではないけれど、説明責任はきちんと果たす」という責任感ある姿勢が伝わります。
「参加者に歩み寄った印象を目指す場合」
•“I am here to share the message we have been given and to make sure we are aligned.”
(共有された内容を皆さんにお伝えし、認識をそろえるために来ました)
•“This is guidance from leadership, and my role is to ensure we are clear on what it entails.”
(これは経営陣からの指示であり、私の役割はその内容を明確にお伝えすることです)
こちらの表現は、参加者に向けたメッセージです。
ただ、日本語に訳すと、どちらも
少し違和感を覚えませんか?
この伝え方は、冗談よりは丁寧なものの、他人事に聞こえてしまいます。
「私はただ伝えるだけ」というニュアンスになり、
冷たいイメージになってしまうんですね。
「こちらは会社の方針になります。内容について説明させていただきます」
であれば、まだモヤモヤは残りますが、多少響きが良くなります。
自分の意志ではないプレゼン資料を手に、
多くの人の前に立つ場合、英語圏では「私は伝える役割を果たしている」という、
前向きな自己表明が大切です。
責任を逃れる表現ではなく「説明する」「一緒に進める」という役割を強調すると、
上手くいく場合が多いです。
日本語でのプレゼンの場合は、「私は関係ない」と誤解されないように、
より柔らかい言葉への配慮が必要です。
「責任を負わない」という響きが嫌われる文化・環境では、できるだけ冷たく聞こえないように、
「私の役割として説明します」「私の責任は説明することで全うします」
というニュアンスをプラスして、信頼感や誠実さを伝えてみてください。
微妙な違いですが、言葉の捉え方は出身国によって、大きく印象が変わります。
プレゼンや発表の際は、この国の人にはどう受け止められるのか、
という部分を考えながら、使う言葉を検討したいですね。



