前回、独自の進化を遂げた「シングリッシュ英語」についてお話しました。
その少し後、立て続けに香港へ出張になり、
こちらは香港英語(Hong Kong English)が特徴だったなあ、
と思い出したので、ご紹介します。
香港英語(Hong Kong English)は、
標準的な英語(イギリス英語がベース)に、広東語の影響が強く混ざった表現です。
香港は、シンガポールと同じく英語の公用語であるため、広く通じる国ですが、
シングリッシュ(Singlish)と同じように、独特な表し方がみられます。
シングリッシュでは、英語の解釈が変わっていった例を紹介しましたが、
香港英語は広東語の文法や発音、語彙の影響を強く受けた表現 も多くあります。
その一例が、 “Add oil” です。
直訳すると、油を加える。
文法的には命令文のため、「もやせ!」となりますが……
「なんじゃそりゃ」と思いますよね。
料理の話なのか、ゴミを燃やすのか。
と考えてしまいますが、実はこれ、中国語の「加油(gaa1 jau4 / jiā yóu)」を
そのまま英語にしただけの表現です。
「加油!」は、中国語で、「頑張って!」や「ファイト!」 という意味があります。
オリンピックの中継などでも、良く見かけますよね。
「加油」が、“Add oil”という香港英語になり、
ビジネスシーンやカジュアルな会話で、ひんぱんに使われるようになりました。
もう一つ、今では私も日常で使っている、 “No need” という言葉を紹介します。
「必要ない」という意味で、
正しい英語は “You don’t need to do that.” や “It’s not necessary.” などです。
しかし香港では、広東語の「唔使(不要)」という言葉に影響を受け、
“No need.” と表されます。
短くて直接的な表現ですが、標準的な英語を学んできた身からすると、特徴的ですよね。
“Do you want me to send an email?” → “No need.”(メール送ろうか? → いらないよ。)
といった感じで使います。
その他にも、
正しい英語では “Can you help me with this?” というべきところを、
香港英語では “Can help me…” と短くするケースがあります。
この主語を省く言い回し、香港ではよく聞くんですね。
Can go? もそうです。
英語としては間違っているけれど、
私はYouが抜けていても、別に気にせず、Yes I canって答えられます。
“Can help me check the report?”(レポート確認してくれる?)
といった相談にも、「OK!」と自然に答えていました。
これ、多くの日本人は、
それほど違和感を覚えないのではないでしょうか?
なぜなら、日本語も主語抜きが多い言語。
主語のない会話になれている日本人にだからこそ、香港英語の理解はお手のものなんですね。
言語には、それぞれの国の歴史、文化が反映されるもの。
英語を知れば知るほど、ささいな違いが面白くなります。
これからも、いろいろな国の英語を聞いて、
それぞれのルーツや表現を比べてみたいな、と思っています。