【相手を静かに励ます~Hang in there~】
仕事で周囲とやりとりしていると、心に残る短い英語表現にときどき出会います。
これまでに「いいな」と感じた表現の一つに “Hang in there.” があります。
意外かもしれませんが、Hang in thereは、オフィスでもカジュアルに使われる表現で、
Slackやメールなどで目にします。
形式ばっている訳ではないのに、
励ましの気持ちと相手を思う人間味がきちんと伝わるところが良いなと感じました。
Hang in thereを直訳すると「そこにぶら下がっていなさい」になります。
ですが、実際の意味はまったく違います。
ビジネスでの“Hang in there” は、
- 「今は大変だけれど、踏ん張って」
- 「もう少し耐えて」
という気持ちを伝える言葉になります。
日本語にすると、「頑張って」「踏ん張りどころですね」「もう少しです」に近い感覚です。
この表現には、相手を急かさない、相手に寄り添っている、という良い部分があります。
「踏ん張って」と相手を応援する裏側に
「もっと努力して」「早くやって」といった圧はありません。
状況のしんどさを、聞き手が受け止めた上で、「あなたは一人ではないから」という
見えないメッセージを含んでいます。
だからこそ、受け取った側は、責められた感じを受けることなく、
静かに励まされます。
踏ん張りどころというのは、焦ったり、混乱したりしがちですが、
Hang in thereというメッセージがあれば、
仲間が後押ししてくれているから頑張ろう、そんな気持ちになれますよね。
オフィスで使われる “Hang in there” は、
上司から部下へでも、同僚同士でも使えます。
いずれの場合も、「踏ん張れ!」という命令ではなく、共感として機能するのが特徴です。
- 「分かっているよ」
- 「状況は見えているよ」
という前提があるから、相手を想う言葉として成立しているんですね。
英語圏には、他にも似た表現がいくつかあります。
- “Hang tight.”(もう少し待ってください)
- “Stay strong.”(気持ちを強く持って)
- “You’ve got this.”(あなたなら大丈夫)
- “Almost there.”(もう少しでゴールです)
どれも励ましの気持ちがこもった言葉ですが、ニュアンスは少しずつ違います。
“You’ve got this.” の場合は、相手の能力を高く評価している印象を受けます。
前述した “Hang in there” は、能力の評価は一切関係がなく、
状況への共感が中心になっています。
だからこそ、相手が疲れているタイミング、行き詰っているタイミングで、自然に響きます。
思いやりに満ちた言葉ですが、使う際の注意点もありますので、覚えておきましょう。
たとえば、相手が抱えている課題が深刻なトラブルだったり、
長期間放置されている問題だったり、という場合、Hang in thereだけで終わらせてしまうと、
- 「励ますだけで、何もしてくれない」
と受け取られる可能性があり、関係性が悪化してしまう恐れがあります。
このような問題を未然に防ぐなら、次のようなフレーズを追加すると安心です。
- “Hang in there. We are working on a solution.”
- (踏ん張ってください。解決に向けて対応しています)
この一文が入ると、空気のような軽い言葉を投げかけるだけとは違い、サポートの約束ができます。
- 自分ではすぐ解決できないが、皆で取り組んでいる課題。
- 時間が解決してくれる見込みがある課題。
- もうすぐ前に進む兆しがある課題。
このような場面で “Hang in there” を使うのは、とても誠実です。
英語の励まし表現は、強さを押しつける言葉ではありません。
一緒に状況を見つめている、という、こちらの姿勢を伝える言葉です。
いろいろな英語表現に触れてきましたが、
“Hang in there” はまさに、励まし表現の象徴のようなフレーズだと感じています。