ある時、アメリカの同僚が産休を取ることに。
同じくらいのタイミングで、彼女の部署異動がありました。
私はてっきりはじめての赤ちゃんなので、
育児に影響しないように配慮したのだろうと思っていたのですが……。
本人と話す機会があった時のこと。
- 「おめでとう!どれくらいお休みなの?
え、2ヶ月で戻ってくるんだ。すごいねぇ。
部署異動になったから、これからはアジア担当じゃなくなるね。
アジア担当だと夜中になっちゃうから、赤ちゃんもいるし当然の異動だよね。
新しい仕事の担当頑張ってね」
こんな風に声をかけたところ、返ってきた答えにびっくり。
- 「仕事の異動は私の妊娠とは関係ないわ。
少なくとも関係ないはずだし、そんな差別されていないと思いたいわ。
私は赤ちゃんが居たってフル稼働できるし、
能力に問題もないもの」
言葉から伝わるように、どうやら心外な様子。
その場はなんとか取り繕ったのですが、
この会話は私にとって大きな学びとなりました。
- 女性であるから
- 妊婦であるから
- 小さい子どもがいるから
という事実は能力の差を生まないこと。
事情への「理解」は必要ですが、
「配慮」は本人が望まない限り不要。
本人が求めていないのに、
仕事の内容や配置へ個人的な理由を含めるのは差別である、
と改めて感じたのです。
日本文化は色々と先手で配慮しがちです。
そのため、
「良かれと思って異動を提案したのに、相手が怒ってしまった」
という経験があるかもしれません。
しかし
海外相手のビジネスの場合、
日本では「優しさ」で通る行為が差別になります。
具体的な例をみてみましょう。
●女性を男性ばかりの職場に配属する場合は配慮する。
●産休明けの社員が無理しないよう仕事の配分を配慮する
●車椅子を使っている社員は移動が多くならないように配慮する
●日本語が母語では無い社員は、難題なプロジェクトへのアサインを慎重にする
日本であれば優しい先回りの配慮であるかもしれませんが、
これらはすべて差別であり、
場合によっては裁判になりかねません。
では、どう対応するのが正解なのでしょうか。
答えは一つ。
相手が「配慮してほしい」と言わない限り、
男女の違いやハンディキャップ、妊娠や育児などを理由に差をつけず、
全員へ同じ対応をすることです。
もちろん相手が妊婦であれば、
ドアは開けてあげたり、荷物は持ってあげたり、といった
身体を気遣う配慮はあるでしょう。
「大丈夫?」「何か私たちでできることはある?」などの
優しさも必要です。
しかし、
仕事という観点では、一切の容赦はいりません。
相手の仕事の能力を疑っている、能力が低下しているかの扱いはダメなのです。
配慮するのは相手から、
- 「休暇をください」
- 「3時に帰りたいので、始業を7時にさせてください」
- 「9月から半年は出張なしにしてください」
といった具体的な要求が届いてからで大丈夫です。
つまり私たちにできるのは、相手が要求を上げやすいよう環境を作ること。
いつでも話を聞く
相手が相談をしやすいようにする
といった配慮を尽くすこと。
その上で希望がないのであれば、これまで通りフル稼働で問題ありません。
何も言わず、
でも、
ちゃんと手を差し伸べる準備をしながら、
頑張りをしっかり支えてあげる。
このような余裕をもって、ハンディがある仲間、一時的に職場を離れる仲間を支援したいですね。
海外ビジネスでは日本流の配慮は控えて、つねに対等な立場を意識。
差別にならないように注意しましょう。