身体の疲れや消耗度合いを表すとき、
火や熱にたとえて表現する機会が、英語圏ではとくに多い気がします。
日本語でも「燃え尽きた」「焼けた」「茹で上がった」などの言葉を使う場合がありますが、
英語の比喩はより視覚的、直感的な感じがします。
燃えたり焼けたり茹でられたりする「温度が上昇するパワー=体力の消耗」という意味合いで、
どれも「疲れています」という状態を指すのが一般的です。
一方英語では、「Heat Level(熱レベル)」ごとに、
それぞれ違った疲れ度合い、消耗度合いが表現されます。
代表的な6つの表現を、レベル別にみてみましょう。
レベル1: Exhausted
• 意味:ただ単に「疲れ果てた」「ヘトヘト」
• 比喩の熱:温度としては低温で、電池が切れたような状態。エネルギータンクが空になったような状態
• 例文:I’m exhausted after back-to-back meetings.
(連続会議のあとで、完全に疲れ果てている)
レベル1の時点ですでに疲れ果てた感じがありますが、ここはまだ序の口です。日本語で言う「出し切った!」「もう余力がない!」くらいの、会話ができるレベルです。
レベル2: Drained
• 意味:「吸い取られたように疲れた」「気力が抜けた」とくに感情面での疲弊によく使われます。
• 比喩の熱:温度は中程度。炎が燃え尽きる、パワーがゼロになる、という状態を超えて、
身体の中にあった“エネルギーが流れ出た、漏れ出た”という状態。
• 例文: I’m emotionally drained after that conversation.
(あの会話で感情的に消耗した)
1日動き回って体力を消耗した、という身体が疲れた表現ではなく、
メンタルの部分で疲弊しているときに使われる言葉です。
相手への気遣い、気が合わないストレス、
すれ違いなどを抱えている場合の疲れを伝えたい時に適しています。
レベル3: Toasted
• 意味:「焼け気味」「焦げかけ」「軽くやられた」。
• 比喩の熱:トースターの中。表面は焦げ始めているが、まだ笑える余裕がある状態。レベル3からは、温度だけではなくて熱さが関与してきます。
• 例文: After that deadline sprint, I’m totally toasted.
(あの締切ラッシュで、もう焦げ気味だよ)
疲れる状況に置かれ続けて、だいぶ疲弊している状態です。
身体へのダメージはあるものの、完全に焦げた状態ではないため、
ギリギリ力が残っている様子が分かります。
レベル4: Cooked
• 意味:直訳すると「調理済み」になりますが、「終わった」「使い物にならない」ニュアンスでも使われます。
• 比喩の熱:高温。完全に火が通り、もはや元に戻れない状態。
• 例文: We’ve been working 14 hours straight — we’re cooked.
(14時間ぶっ続けで働いて、もう完全に茹で上がっている)
仕事で疲れ果ててしまい、気力、体力が残っていない、と言うときによく使われます。自分自身が食材だったとしたら、完全に調理されて、もとの素材には戻れないレベルのダメージを受けている、という様子です。
レベル5: Fried
• 意味:「脳が焼けた」「完全にオーバーヒート」。短時間で加熱しすぎた感じ。日本語なら「頭ショートした」「オーバーヒートした」に近いかもしれません。
• 比喩の熱:油の中。高温でパチパチ、思考回路も焦げつく。
• 例文: My brain’s fried after that data review.
(あのデータレビューのあと、頭が焼けて動かない)
「茹でる」を超えて、さらに熱が高い「揚げる」を用いた表現です。身体やメンタルがひどい状態、ボロボロな状態であるのが分かります。あまり使いたくありませんが、過酷な業務を終えたのだと周りに伝えたいときは、Friedを使ってみてください。
レベル6: Burnt out
• 意味:「燃え尽きた」「もう何も残っていない」。長期間のストレスや過労で心が灰になったような状態。
• 比喩の熱:火が完全に燃え切って、灰しか残っていない。
• 例文: After years in this job, I’m completely burnt out.
(この仕事を何年も続けて、もう完全に燃え尽きた)
頑張り続けた結果もう無理だ、という場合は、
燃え尽き症候群を表すバーンアウトで完全燃焼を表します。
Burnt outと言っている人を見かけたら、
身体がまったく動かない、行動の意欲が一切湧かないなど、
ボロボロの状態である恐れがあります。
早めにサポートしてあげてください。
日本語では主に「疲れた」「くたびれた」「だるい」といった言葉で表される疲労感。
疲れのレベルはなんとなく分かりますが、これらの表現では、火加減までは感じません。
しかし英語の、fry(揚げる)cook(茹でる) burn(燃やす) といった言葉は、
調理の温度感がそのまま、疲労レベルにつながっています。
「熱エネルギーのパワー」によって、捉え方が変わるのが面白いですよね。
言葉で人の感覚が可視化される、味のある英語の使い方。
英語圏ならではの使い方にまた出会ったら、このブログで紹介します。