日本ブランドの神話

考察

日本製品は品質が良く素晴らしい。
日本人は真面目で勤勉だ、
といった日本神話をよく耳にします。

嬉しいことですが、中にはニュアンスが違うのかもしれない、と感じた話もありました。
今回は、外国人と会話して気付いた4つのエピソードを紹介いたします。

(1)真面目なのか間抜けなのか

これはマレーシアで聞いた話です。

マレーシアにあるペトロナスツインタワーは、
タワー1を日本の建設会社ハザマが、
タワー2を韓国の建築会社サムスン物産建設部門と極東建設が施工していました。

この2つのタワー建設ですが、双方を競争させることで、
施工工事期間の短縮を狙っていたそうです。

「最初にタワーを完成させたグループが、2本のタワーを結ぶ連絡橋の建設許可を得られる」

という条件を出し、実際に競わせようとしました。

結果的に競争は中止されたのですが、
この時マレーシアで噂になった話があります。

競争中止が発表された晩、日本側は、
「そうか、中止になったのか」
とそのまま受け止めました。

ところが韓国側は、
「競争中止が今日発表されたのなら、今日中に完成させれば、
競争結果で勝ったという事実は有効だ!」
と判断し、猛スピードで突貫工事、タワー2が完成したそうです。

競争は中止になりましたが、
連絡橋の建設は韓国側が担うことになりました。

マレーシアの同僚に、
「日本人は真面目だよねぇ。
韓国人は絶対に勝ちたかったからさ。やっぱり抜け目ないよね」
と言われ、複雑な思いをしたできごとです。

(2)品質第一なのか自分が可愛いのか

日本の品質第一主義は、世界中誰もが知るところです。
ですが海外の人間と話していると時折、

「日本人は高品質なものが好きだから、
自国内に最高品質のものをとどめて、
輸出にはグレードの落ちるものを出している」

そんな話を耳にすることがあります。

日本で爆買いしている外国人をよく見かけますが
私の知り合いも、
「だから日本に旅行した時に、わざわざ現地で買うの。
だって、輸出されているものは品質が二流なんだもの」
というのです。

たしかに、最高級品質のものは自国内で高く売った方が高利益です。
そのため輸出ではなく、
国内の一流店やお得意様に回しているブランドもあるかもしれません。

とはいえそこに、
「他国に渡したくないから」
という意図はないと思われますし、
日本ブランドの誇りにかけて、その他輸出品の質を海外向けに落とすことはないと思います。

ですが、海外から見ると、
「国として輸出を斡旋せず、自国内での消費優先が許されている
=自国内の方が海外より大事と言う姿勢」

そう感じられてしまうようです。

(3)日本が特殊なのか、日本人が他を理解していないのか

海外にいると、

  • 「人に話しかけるとき、どこの国の人でも“さん”をつけている」
  • 「日本のビジネスのやり方は特殊だから……」
  • 「日本には四季があるから……」

このような会話をしている日本人を見かけます。
そしてそのたびに感じる、生暖かい空気があります。

この発言が失礼という訳ではなく、
また日本人をからかっている訳でもないのですが、理解しがたいことはたしかです。

これらの「日本はこうだから」という言葉は、
内向きな発言であり、相手を知るつもりがない、と捉えられてしまいます。
悪気はないものの、自分のロジックを通そうとする日本人の無邪気さ。
そして日本人特有の親切・丁寧・礼儀正しくあろうとするその気持ち。

これらは理解して、
海外側がしょうがないなあと見守る、そんな空気をよく感じます。

  • 自国の敬称を使う。
  • 自国の商習慣に合わせようとする。
  • 他国の季節を理解しようとしない。

このような態度で、いきなり自国のことばかり語る日本人に、
違和感を覚えているのかもしれません。

たとえばですが、一年中暖かいシンガポールにだって雨季や寒気がありますし、
多くの国には四季があります。
四季の中身が違うという観点もありますが、
ならば、日本だけにあるのではなくて、
異なる四季が双方にある、と考える方が適切です。

大きな溝だなあと思いますが、
外国人相手に「さん」をつけて話している日本人が後を絶ちません。
ちょっと困った顔をしている海外勢を見ながら、
どう伝えたら良いのものか、毎回悩むところです。

(4)新鮮さの意味

私には香港に部下がいるのですが、
彼は何度も食中毒で病院へ駆け込み、病欠を申請しています。
問いただすと、大体が刺身を食べての食中毒です。

生魚の保管方法や物流が日本とは異なるのでしょう。

また、香港やシンガポール、アメリカの人たちと卵や生鮮食品の賞味期限について話していると、
にわかには信じられない現実があります。

アメリカでは1ヶ月経った卵がスーパーに並んでいますし、
りんごは数ヶ月経ったものです。
香港のスターバックスで販売されている野菜スティックは
保存のためでしょうか、お酢の味がします。

ビールや卵が日数管理されている日本の新鮮信仰は、
海外勢からは仰天する物流技術なのだそうです。

日本では当たり前に食べられる、ランチサラダのプチトマト。
それを歓喜しながら食べている来客を見ていると、
日本ではどれだけの労力が「新鮮である」という価値に使われているのか痛感します。

日本中どこの家庭、どこの店でも新鮮な野菜や刺身が販売されていること、
食べられることに、もっと感謝するべきかもしれません。