外資系に引き継ぎがない理由

考察

外資系企業には、仕事の引き継ぎがないのをご存じでしょうか?

外資系に勤めて20年近くなりましたが、
どのような部署・部門にいても引き継ぎ作業をみたことがありません。

日本ではにわかに信じられないですよね。
「引き継ぎなしで、業務を担えるはずがない」
そう思っている方が大半だと思います。

私も日本企業にいた頃は、
部署異動のたびに大きなファイルいっぱいの引き継ぎ資料を作成していた覚えがあります。

後任者のため、経緯や履歴をこと細かに証明書類と合わせて整理していましたし、
かならず引き継ぎのための会議をしていました。

外資系に引き継ぎがない理由には、
そもそも前任者がいない、という事情があります。
前任者が退職してから後任を採用するケースが多いため、
後任者は前任者へ直接状況をたしかめられませんし、前任者のメールなども残されていません。
多くの場合、
会社のシステム・データに残された情報だけが手がかりで、
そこから過去の経緯を調べることになります。

私がはたらくIT業界でも引き継ぎがないのは当たり前です
そして引き継ぎのない人事異動が、実は、理にかなっています。

IT関連は人の入れ替わりが激しい業種です。
ITをとりまく製品や技術、ビジネス構造の変化も激しく、
いつも漫然と以前と同じように同じ業務を繰り返す、という行動は適しません。

顧客や製品、市場動向をみながら、
毎年最善の提案・処理・対処を求められます。
過去の結果やデータにとらわれず、
その時もっとも適切な対応を実施することで、リスクを大きく低減できます。

顧客や関係者全員にとって、望ましい結果を得るためにも、
臨機応変な対応が重要です。

だからこそ、仮に前任者がいたとしても、
その考えや行動を引き継ぐ、という考えがありません。

もし引き継ぎがないとあなたが文句を言っているなら、
その発言は
「状況を理解し、対処する能力が自分にはありませんし、その努力をする気もありません」
そう公言するようなものです。

外資系で採用された、ということは
「即戦力として、状況に応じた行動を期待されている」ということです。
教えられていない、やったことがないは、言い訳になりません。
周囲をよくみて、自分が何をするべきか、今何ができるのかを理解し、実行に移しましょう。

難しく感じるかもしれませんが、
逆に言えば、その時にできるベストを尽くせば良い、ということでもあります。

新しい担当者に、最終判断や最終決定を求められるケースはまずありません。

いざとなれば、
「この判断の結果こうなったが、このまま進めて良いか?」
など行動の前に上司に指示を仰ぐこともできます。
上司と相談すれば、独断ではないので連帯責任ですから。

まずは自分の頭で考えて、その時々に応じた対応を考えましょう。
状況に流されるのではなく、
自ら工夫して乗り越えられると、より信頼を獲得できます。