仕事で合宿に参加していたとき、一人の仲間の所在が分からなくなりました。それに気付いた他の仲間が「彼女はどこにいっちゃったの?」と尋ねたときに、
返ってきたフレーズが、「She’s under the weather.」です。
このやりとりを耳にして、
「ああ、彼女は具合が悪いんだろうな」
とは文脈から理解できたのですが、
「どうして “under the weather” で体調が悪いという意味になるんだろう?」
と興味が湧き、理由を調べてみました。
“under the weather”は直訳すると「天候の下」
日本でも、台風のときなど天気が悪い時に、気圧の変化で頭痛がする、
だるくなる、なんてこと言いますよね。
海外でも、同じような意味があるのかな、と気になったんです。
そこで調べてみたところ、
“under the weather”の語源は天気がもとではなく、
古い航海用語が由来になっていました。
昔、船乗りが悪天候で体調を崩したとき、
安全のために「天候の下(under the weather)」、
つまり甲板の下で、休ませたそうです。
これを当時は、 “under the weather bow” と呼んでいました。
「bow」は船の「舳先(へさき)」を表す言葉で、
「weather bow」は風が強く吹き付ける船の舳先、という意味になります。
「風が強い場所から、甲板へ移動して休もう」という言葉が、
時代とともに“under the weather”に省略され、
使い方も単純に「体調が悪い」「ちょっと疲れている」というくらいの、
カジュアルな使われ方になっていったそうです。
語源を知って、英語の比喩って面白いなあと感じました。
それと同時に、以前日本人の同僚が
悪気なく使ってしまったフレーズを思い出しました。
そのとき、体調の悪い別の同僚がいたのですが、
日本人の同僚は心配して
「具合が悪そうに見えるよ」
と伝えるために
「You look sick」
と言ってしまったんです。
この言葉、英語では少しニュアンスが違って、
「お前、気持ち悪い」
というという失礼な響きになってしまうんですよね。
場が一瞬、気まずい空気になったのを、今でもよく覚えています。
この経験以降、 “sick” という単語を使うとき、
悪い意味に捉えられたらどうしよう……とドキドキするようになりました。
こんな捉え方の違いを防ぐためにも、
“under the weather” は便利だと思います。
言葉自体に「病気」や「悪い」といったマイナスの表現が含まれないため、
直接的になりません。
柔らかい響きもあり、「少し体調が優れない」という状態を、穏やかに伝えられます。
カジュアルな会話で使用するなら
「I’m under the weather today.」という風に、さらっと伝えると自然です。
ちょっと気分が悪いだけなのに、
たとえば “feeling sick” という表現を選んだ場合、
よりストレートになり、深刻な響きになってしまいます。
手術や休職が必要な良くない状態だと思われてしまうかもしれません。
会社を休んで病院へ行くくらい体調が悪い場合は、
“feeling sick”が正しい場面もありますが、
ちょっとした船酔いレベルの、軽い体調不良の場合は、
“under the weather” を選ぶと場の雰囲気を壊さずに済む気がします。
体調不良を表す言葉は、他にもいろいろあります。
フォーマルに伝えるなら “I’m not feeling well.” や “I’m unwell.”、
カジュアルな関係なら
“I’m feeling a bit off.” とか “I’m run down.” なんて言い方も使えます。
それぞれ微妙にトーンが違うので、状況に応じて使い分けられるようになると便利です。