前回、香港出張の話をしましたが、
香港をはじめとする中華圏に来ると、食事文化の違いに驚かされます。
中華料理って、日本でも大皿でたくさん頼んで、みんなで分けますよね。
これが、中華圏、中華系の人との食事になると、さらに大皿の数が増え、
明らかに人数で食べきれない量がオーダーされます。
この習慣を知らないと、
「こんなに頼むの?」
とストップをかけたくなってしまうのですが、
中国本土、香港での食事は、食べきってしまうとマナー違反なんですね。
台湾やシンガポール、マレーシアなんかでも、この傾向があるんですが、
注文した料理をすべて食べてしまったら、
「量が足りなかった」
という不満を表すサインになってしまうんです。
日本では、きちんと残さず食べるのがマナーなのに、国が変われば、常識も変わりますよね。
ごっそり残して、お腹さすりながら
「もう食べられないわー、美味しかったわ〜」
というのが、お行儀の良い食べ方です。
マナーを守って、料理を残して……では、ここで気になるのが、
残ってしまった食べ物たちをどうするのか? という部分。
ここで登場するのは「打包」です。
「打包(dǎ bāo / daa2 baau1 / ダーパオ)」は、
日本でいうところの 「テイクアウト(持ち帰り)」 という意味。
英語の “take out” や “to-go” に近い言葉です。
大きな違いとしては、英語の “take out” は、
最初から持ち帰って、家で食べるときに使うのにたいして、
「打包」はレストランで食べ残した料理を包んでもらう 場面で使います。
アメリカでは昔、 Doggie Bagと表していました。
犬にあげるために持ち帰るよ……という言葉だったのですが、
現在はフードロスの観点からも持ち帰るのが当たり前、
その結果、“to-go”などの言葉が多く使われるようになりました。
中華圏で、もう一つ、面白いなぁと感じたのが、持ち帰った食べ物の行き先です。
日本では家に帰って、後から食べるのが一般的ですが、
中国や香港ではオフィスに持っていくケースも多いんです。
オフィスで働いている人、
または、オフィスに出入りしている清掃係のおばちゃんたちになんかに
お裾分けするのが、中華圏の文化になっています。
中国本土ではとくに、掃除係の方々の多くが貧しい人。
この人達に分けて差し上げるのは当たり前、という考え方があり、
オフィスのコーヒーコーナーなんかに持ち帰った食事を置いておくと、
残業の人が食べたり、最終的には清掃の方々が持ち帰ったり、という形で片付くそうです。
残した食事にはちゃんと行き先があって、無駄にならないんだ、と思いつつも、
きっちり残さず食べる日本で育った私ですので、不思議な風習だなあと感じました。