ビジネスで見かける食べ物のイディオム

例文・トピックス

普段から美味しいものを食べるのが大好きな私。

ですので、食べ物関連のIdiomを耳にすると、つい気になってしまいます。

例えばこちら。

“I’ve just been noodling on a few ideas.
Nothing more than some chicken scratch on my notepad at this point.”
「ちょっとしたアイデアをいろいろと考えていただけで、
今のところはノートに書いた走り書き程度の内容です」

このフレーズ、訳さなくてもなんとなく
「麺をコネコネして、適当に引っ掻いて書いた」そんな走り書きがあるんだろうなぁ、
というビジュアルが思い浮かんできます。

英語の “noodle” は本来「麺」という意味ですが
「I have been noodling」という表現になると「ただ考えている」ではなく
「頭の中でぐるぐる練っている」というイメージになります。

まだはっきりとした結論にはいたっていないけれど、
アイデアを掴むために、あれこれ試しながら思案している、という状態ですね。

日本語で言うなら「頭の中でこねくり回している」
「アイデアをこねている」といったニュアンスです。
「行き詰まって煙が出そう」というイメージではなく、
「楽しみながら試行錯誤している」そんな雰囲気が近い気がします。

この文章には、麺だけでなくchickenも登場します。
chickenはもちろん鶏ですが、
chicken scratchと表す場合は、
鶏のひっかき傷=適当に書いた字、殴り書き、といった意味になります。

英語には、美味しそうな表現で「美味しい部分」を表す「Secret Sauce」という言葉もあります。

これは、そのまま「秘密のソース」と解釈して良い表現。
企業や個人が持つ独自の強みや、成功を支えている特別な要素を指しています。

マーケティングや戦略の議論をしているとき
「当社のSecret Sauceは〜です」といった使い方をすると、
自社ならではの良い部分、差別化要因がスマートに伝わります。

あえて詳細は語らず、“秘伝のタレ”的な余韻を残すのが、粋ですよね。
この表現を聞くたびに、あの「焼肉のタレ」が思い浮かび、微笑んでしまいます。

食べ物がらみのフレーズは数え切れないくらいありますが、
私が一番好きなのは「Apple to Apple」(公平な比較)という表現を、ちょっと捻った言葉。
「Apples to Oranges, ending up with Bananas and Lemons」です。

これは一般的な表現ではなく、
ユーモアとして使用していたのを聞いたのですが、強く印象に残っています。

もともとの「Apple to Apple」は、
“Apple to Apple comparison”(条件を揃えた上での比較)といった風に活用されます。
異なる基準や文脈を無視して物事を比べるのではなく、
共通の前提に立って比較するべきだ、という姿勢を示しているんですね。

日本語で言うと「同じ土俵で比べる」という表現に近い言葉です。
プロジェクトの効果測定や投資判断の場面で、冷静な判断を促すときなどに便利です。

“Apples to Oranges”の場合は「本質的に異なるものを、比較しても意味がない」
というたとえになります。
That is comparing apples to oranges.
「それは(基準が)異なる比較をしているので意味がない」といった形でよく使用されています。

Bananasはただのバナナではありません。
英語圏ではCrazy, chaotic, sillyといった意味があり、
”That is banana”は「それは馬鹿馬鹿しい、嘘くさい」という意味になります。

Lemonも実は、スラングだと「ポンコツ車」です。

外から見ただけでは、腐っているかどうか分からないレモン。
そこから中古車のハズレ品を、Lemonと呼ぶようになり、
車以外でも「欠陥品」という意味合いで耳にします。

先ほどのお気に入りフレーズ「Apples to Oranges, ending up with Bananas and Lemons」 
は、これらをぜんぶ合わせたもので、
「話の収拾がつかなくなる」という意味で使われていました。

「比較が的外れな上に、話があらぬ方向へ展開してしまい、結論がつかない」
そんな混乱した会議や議論を前に、やや皮肉を込めて、気持ちを伝えたかったんでしょうね。

耳にした瞬間、なんとも賑やかに、とっ散らかっているイメージが浮かび、好きだなぁと感じました。