うさぎの穴に入り込むな

例文・トピックス

“Don’t go down the rabbit hole”
「うさぎの穴(ラビットホール)に入り込むな」
という言葉、聞いたことありますか?

これは英語圏で、細かいことに惑わされたり、
どうでもいいことに時間を浪費したりしないで仕事をしよう、といった意味で使われます。
どうしてうさぎの穴? と首をかしげたくなりますが、
語源を知れば納得。

もともとは、ルイス・キャロル作の『不思議の国のアリス』が元になっています。

主人公のアリスが白ウサギを追いかけ、
うさぎ穴に落ち、奇妙な世界に迷い込んでしまうストーリーから、
うさぎの穴に入るな、深入りするな、
といったニュアンスで使われるようになりました。

物語を知らない場合、現実の「うさぎの穴(rabbit hole)」はそこまで深く、
長いわけではないため、どういう意味だろう? と疑問が生じます。

英語表現でも、“go into”(中に入る)ではなく、
あえて“go down”(深く降りていく)を使うことで、
「延々と続く、深くて出口の見えない思考の迷路、調査の沼にハマる」という
イメージを強調しているように感じます。

「rabbit hole」のフレーズを使うと、
「本来の目的を見失うほど、深いところに入り込みすぎる」
「調べ物をしている最中に、別の情報が気になり、どんどん脱線しまう」
といった場面を容易に表せます。

I was just trying to understand, but then I went down a rabbit hole and spent the whole afternoon on it.
(ただ単に調べようとしただけなのに、深みにはまり、午後の時間を全部費やしてしまった)

このような会話が、英語圏ではときどきみられます。

  • 目的を見失っている状態
  • 「深掘りのし過ぎは注意」という警告
  • 優先順位を見誤り、本質ではない部分に時間を費やしている状態

といった場面に最適なニュアンスです。
もう一つ、うさぎの穴と似た表現に、”follow the white rabbit”という言葉があります。

これも『不思議の国のアリス』に由来したフレーズで、
「白うさぎを追え」という意味があるのですが、
広く使われるようになったのは、映画『マトリックス』の影響です。

マトリックスの主人公であるネオが、
「Follow the white rabbit(白うさぎを追え)」というメッセージを受け取り、
「目覚め」や「現実への疑問」につながっていきます。

映画のセリフを見てみましょう

  • You take the blue pill… the story ends. You take the red pill… you stay in Wonderland, and I show you how deep the rabbit hole goes.
    ― 『マトリックス』モーフィアスのセリフ

「青い薬を飲めば、いつもの日常に戻れる。
赤い薬を飲めば、不思議の国でどこまでうさぎ穴が深いか、君に見せよう」

この言葉から分かるように、
アリスをもとした「白うさぎを追え」のイメージは
「深みにハマってみる?」という感じですが、
マトリックス上映後は、ニュアンスや解釈がさらに追加されました。

  • 変革、挑戦、革新の第一歩
  • 覚悟を持って変化に飛び込む強い意志
  • 今までの前提や常識を疑い、未知や真実を追求する

といったイメージです。

現在の「白うさぎを追う」行動は、
「自分の認識や価値観を揺さぶり、本質を掴もうとする意志」という解釈に変化していて、
社会のリーダーとなって新しいことにチャレンジする人の映像が浮かんでくるようです。

この例のように、絵本や映画の影響で、
もともとの意味から大きくニュアンスが変わった言葉、結構あるものです。

今後、別の人気作品で、「rabbit hole」という言葉が使われることがあったら
……年代によって、さらに大きく解釈が変わるフレーズになるかもしれません。

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