「言った言わない」の水掛け論を防ぐ <パート1>

例文・トピックス

ビジネスをしていると、国内外問わず、

  • 「指示されていない」
  • 「その話は聞いてない」
  • 「それは、私の仕事だったの? はっきり指示されてないのに」

そんな会話が多くきかれます。

  • 「私は指示したはず」
  • 「そんな話は言っていなかったはず」

どちらの立場にも立ったことがある人が、ほとんどではないでしょうか?

日本語でも水掛け論になるケースが多い「言った言わない」の問題ですが、
母国語でない英語を使って動く場合、より誤解やトラブルが発生しやすくなります。
私のチームにも、英語が母国語ではないメンバーが何人もいます。
このメンバーと、上手にコミュニケーションを築くために、
「誤解のない英語」で指示するように、指導しています。

英語の文法や論法的に合っているかどうかは一旦脇に置いて、
まずは正しく伝わる表現を心がけましょう。

【特定の相手に作業をお願いする場合】

特に気をつけたいのが、相手に作業をお願いするケースです。
だれが作業をするのか、主体者が分かる英語を使ってください。

一例ですが、

  • We need to create the document

といった言葉で伝えてしまうと、発言者が作業をするのかと、
勘違いされる恐れがあります。
丁寧に、Would you、Pleaseといった装飾も、
分かりづらくなるため不要です。

あなたがやるべき、と短い言葉ではっきり伝えましょう。

  • You create the document. (貴方が資料を作成してください)
  • You need to create the document (貴方が資料作成する必要性があります)

この会話は、誰が進めるのか、という事実確認のため、
命令形に聞こえてしまっても、失礼ではありません。
強い言い回しが気になる場合は、以下の文章を使ってみましょう。

  • The quote creation has to be done by you.(見積もり作成は貴方にお願いします)
  • The creation of the quote needs to be done by you.(見積もり作成は貴方の方で実施してください)

このように受動態で表すと、日本人は気分が落ち着きやすいでしょう。

作業者を短く伝えた後で、

  • Thank you for your understanding(ご理解ありがとうございます)

といったフォローを入れるのも良い手段です。

【時間のニュアンスを伝える場合】

いつまでに終わらせるのか、時間のニュアンスを伝えるのも、簡単ではありません。

海外相手の場合、
日本人が当たり前に身につけている仕事の優先順位やスピード感、責任感、
といった概念が通用しません。

重要だと分かっていても、こちらから声をかけなければほったらかし。
「あら急いでいたの?」そんな拍子抜けする返事が日常茶飯事です。
英語圏で時間のニュアンスを伝えるなら、
時間や日程を明確に指示。
時差がある場合は、かならず事前に共有しておきましょう。

  • We expect you to complete the task by DD/MM 
    (何月何日までに作業完了の予定でいます)
  • Need the reply by EOB Japan time, which is 5:00 in the morning Boston time
    (日本時間の終業時、ボストン時間では朝5時までにお返事をください)

など、作業完了の見込み時間、返事が必要な時間を伝えてください。
こちらが簡単な作業だと思っていても、相手にとってはそうではない場合。
逆に、相手がすぐできると判断していても、
自分の案件で忙しくて即時対応は難しい、という場合もあります。

何かをお願いしたり、依頼されたりした場合は、

  • Please expect 2 days for me to revert back to you (返信までに2日かかるとお考え下さい)
  • Please obtain confirmation within this week. (今週中に確認を得てください)

など、具体的な日時を伝えましょう。

【関係者が複数いる場合】

関係者が複数いる場合、You/they/usなどの指示語を使ってしまうと、
誰が対象なのか分かりません。
「誰が」「誰に」という部分を、はっきり明確にしましょう。

仕事への真剣度が違うのか、海外相手のビジネスでは、
うっかりさん・テキトーさんが多くみられます。
あいまいにしないために、使うべき表現をみてみましょう。

「NG例①」

  • She will inform you about it, so please get it sent back to them.

このように指示語が「She」「you」「it」「it」「them」などのように続く場合、
誤解が生まれがちです。

「正解例」

  • Jenny will inform you about the test, so please get the email sent back to the marketing team.

複数の相手について言及する場合は、上の例のように、誰を指しているのか、はっきり言葉にしましょう。

「NG例②」

  • The prior quote is wrong and the latter quote that amended the different quote is correct with a higher price than the Quotes.

この文章は、「前の」「他の」「後の」 を指すQuoteとQuoteが3種類ある上に、Quote が合計で4回出てくるため、何がどれを表しているのか分かりません。

「正解例」

  • Quote 1 is wrong and the Quote 2 that amended the Quote 3 is correct.  The Quote 2 is higher than the Quote 1 and Quote 3.

この場合は、上記のような形で数字を振ったり、文章を短くしたりして関係を明確にして、
伝わる文章にしましょう。

私は普段から、このような工夫で「言った言わない」問題を乗り切っています。
いろいろありますが、本当に大切なのは、仕事をちゃんと完遂すること。

「この伝え方は相手に失礼かもしれない……」

と悩んでごちゃごちゃ書くよりも、「どうせ私は英語初心者なんだから」と割り切り、
ズバリ書いてしまった方が、上手くいきます。

事務的な内容、命令的な内容を書いた後で、
もしくは別の機会に、丁寧に心を込めてフォローしたり、失礼のないように対応したりすればOKです。